━━母親になってからのご自身の変化について少しお話ししていただけますか?
子供が生まれる前はそれこそ“仕事一筋”のような生活をしていたし、母親になって間もない頃は、まだ自分の中で“今までのように全てのことをこなせる”という自信があったと思うの。でもコロナ禍で娘と一緒にたくさんの時間を過ごしているうちに、その時間がまるで自然の中で花見を楽しんでいるような感謝の気持ちに変わってきて「お金がなくたって幸せは近くにあるんだ。お金のために家族と離れて生活をすることの方がよほど無意味なこと。」ということに気付いたの。
そう思ったとき、“今まではいつもゴールを目指して仕事に身を費やしてきたけれど、これから先は自分の生活の優先順位を変えるようにしよう“と決心したという結論に至ったわけ! それから、自分の中で”イエス”と“ノー”をはっきりさせるようになったことも母親になってからの変化だと思うわ。
━━お嬢さんに素晴らしいお手本を見せているような気がしますが。
彼女は既に自分のエネルギーを持っているの。それから、娘と父親はとても強い絆で繋がっていて、家族3人も強い信頼関係で結びついているし、今の私はそれだけで本当に幸せなの。
━━お嬢さんは“マビューズの血”を引いているのではないでしょうか?
彼女はよく話しをする子で、私はいつも“そうそう!”と言ってうなずいているだけ! 今はドイツ語と英語の二か国語で話をすることができるし、義理の両親がロシア出身なのでロシア語も学んでいるところなの。とにかく、いつもよく質問をする子で、私は質問攻め!「ママ、カエルはロシア語で何と言うの?」なんていう質問は日常茶飯事のことよ!
━━あなたが何をしている人なのか、お嬢さんはご存知でしょうか?
よく仕事場に連れて行くし、私とオティ(Oti)おばさん(モッツィと同じ『ストリクトリー』(Strictly)で審査員を務めるモッツィの妹)がテレビに出ている人ということは分かっていると思うわ。私自身、それを知っておくことはドイツで育つ若い黒人の女の子にとってとても大切なことだと思っているけれど、もちろん彼女にはまだそんだことは分かっていないしね。とにかく一度私の家に来ると我が家のライフスタイルが一目瞭然分かると思うわ。ひっそりとした森の中の素朴な暮らし、それが彼女にとっては全てであり、現実でもあるの。
━━若かりし頃のあなたは今の自分の活躍を予測していたのでしょうか?
南アフリカで育った私は、幼いころから心の中にトラウマを抱えているの。例えば私のことを“美しい”と言ってくれる人は誰もいなかったし、自分でも自分のことを“綺麗”だなんて思ったことはないわ。それどころか、いつも“自分はとても醜い子”と思っていたんですもの。
だから今のこの撮影でも『ストリクトリー』に出演しているときでも、いつも自分の子供の頃の目でしか自分を見ることができないのよね。そして、いつも“これって本当に私? 今起きていることは現実かしら?”と問いかけている自分がいたりするの。その感情は、私の心の奥で決して消えてなくなることはなくて、ことあるごとにいつも“ねえ、そこの女の子! どうしてこうなったのかしらね”と自問自答したりしているわ。
━━お嬢さんが“あなたと同じような物の考え方”をしないよう、どこかで注意したりしていますか?
もちろん、朝起きると「まあ素敵なお嬢さん」と言って褒めるようにしているし、とにかく毎日、有り余るほどの愛を与えて育てるようにしているわ。先日も「まあ、あなたって何て美しい女の子でしょう!」と言って彼女のことを褒めたら、彼女から戻ってきた答えは、驚いたことに「ママ、そんなことは分かっているわ!」ですって!
私が育った南アフリカではいつも謙虚さが要求されて、誰かが「君は美しいね。」と言ってくれても、「ありがとう、でも」と答えなければならないの。でも、娘はそれをしないの。例えば誰かが「『ストリクトリー』に出ている君は素晴らしいね。」と言ってくれたとしても、私の場合はその言葉を素直に受け取ることができなくて、いつも無理をしてでも自分にそう思い込ませなければならないのよね。
━━今年4月に40歳の節目の誕生日を迎えて、どのような思いが胸によぎったりしたのでしょうか?
素敵な主人と可愛い子供がいて、ダンススクールも経営している。その上40歳を迎えた今でも自分が好きな仕事を続けている。そんな自分の人生をとても豊かなものと思っているわ。これから先の人生は人の目を気にせず、自分のために生きていくつもりよ。そして、もっと自分を可愛がって、無理をせずに自然の流れに任せて生きていくことができれば最高ね。
━━ドイツからイギリスに移って永住するような考えはあるのでしょうか?
もしかすると、そうするかもしれないわ。でも今イギリスは国としてさまざまな試練を抱えているし、これから先どのように物事が展開していくのか様子を見ながら考えることにするわ。黒人の人口はドイツよりイギリスの方がはるかに多いし、今娘が通っている幼稚園のクラスは黒人の子は彼女ただ1人で、こうした状況がいつまでも続くのは良くないとは思っているの。
娘には多様性のある環境の中で、自分のロールモデルを探してほしいと思っているし、その点では南アフリカは歴史的に言っても昔からイギリスの連邦国だし、ドイツで育つのとはちょっと違う面があるのよね。だから、イギリスで生活することも視野に入れながら、あとのことは成り行きに任せるようにしたいと思っているの。
『ストリクトリー・カム・ダンシング』(Strictly Come Dancing)は9月18日より、BBC One(BBC 1チャンネル)とBBC iPlayerで放送中。
Words © Rianne Ison
Photos © David Cummings
Photographer’s assistant: Gabriel Hutchinson, Stylist: Hebe Fox, Make-up: Marcos Gurgel, Hair: Bradley Thomas Cahill using Color WoW dream Coat, Colour WoW Pop n lock and ghd max styler.
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