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悲惨な家族ドラマ映画『アーマゲドン・タイム』について「おそらく私が今まで引き受けた中で最も厳しく重い作品でした。」と語る、ジェレミー・ストロング。

OK! インタビュー☆ジェレミー・ストロング:『アーマゲドン・タイム』(前編)

1980年代のNYのクイーンズ地区を舞台にした悲惨な家族ドラマ映画『アーマゲドン・タイム』で主人公の粗野な父親を演じたジェレミー。

ジェレミー・ストロング(Jeremy Strong)は、メディア王国に君臨しメディア王の異名をとる億万長者、ルパート・マードック(Rupert Murdoch)を描いたHBOの人気テレビシリーズ『メディア王 〜華麗なる一族〜』(原題:Succession)のケンダル・ロイ(Kendall Roy)として知られる、業界でも最も優れた俳優の1人です。

『メディア王 〜華麗なる一族〜』の中で、野心家で屈折した精神の持ち主、そして自己破滅型の息子ケンダル・ロイ役を演じ、その演技が認められ、2021年には見事主演男優賞を受賞したストロングだが、彼は当時を振り返り次のようなコメントを残している。

「あのドラマに出てくる人物たちは皆、自分たちの過去の遺産によって破壊され、傷つけられている。だから僕は可能な限り彼らの気持ちを理解し、役柄に同調しようと努力したことを今でもよく覚えているんだ。」

それまでは『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(原題:The Big Short)、『モリーズ・ゲーム』(原題:Molly’s Game)、『シカゴ7裁判』(原題:The Trial of the Chicago 7)などに脇役として出演していたストロングにとって、『メディア王 〜華麗なる一族〜』はまさに彼の人生に脚光をもたらす作品だったといえる。

しかし今、彼は1980年代のニューヨークのクイーンズ地区を舞台にした悲惨な家族ドラマ映画、ジェームズ・グレイ(James Gray)監督の半自伝的作品『アーマゲドン・タイム』(原題:Armageddon Time)に出演し、ストロングの映画キャリアはここに来て大きな飛躍を遂げている。この作品は、今年5月に開催されたカンヌ国際映画祭、続く9月に開催されたテルライド映画祭(Telluride Film Festival)で絶賛され、イギリスでは11月18日に公開されることになっている(アメリカ公開は10月28日)。

この映画の中でストロングはユダヤ人の配管工、アーヴィン・グラフ(Irving Graff)役を演じ、グレイ監督の記憶の中にある、粗野で怒りっぽく、14歳の息子ポール(Paul)(バンクス・レペタ:Banks Repeta)に自分の欲求不満をぶつける父親を熱演している。

「役を演じるにあたり、ジェームズが監督としてどのような気持ちで映画づくりをしているのかという思いと重なり、おそらく私が今まで引き受けた中で最も厳しく重い作品でした。先に何があるのか見えないという状況は、いつも大きな不安と恐怖を抱かせるものですが、この役作りの難しさは、その恐怖を克服して正真正銘かつ具体的に役になりきることでした。誰か他の人の役作りを模倣したり、ただ単に登場人物の感情を想像したり、自分が持つ過去の記憶をもとにして、その役柄を演じることは許されないのです。結局のところ、私たちは俳優として自分が持っている本能を駆使して、役柄を演じ切ることしかできないのです。ですから、役作りは、監督のジェームズの手から離れたところで、自分自身の全身全霊を掛けて駆け巡る旅のようなものなのです。そして監督は私たち俳優にその“創造の自由”を与えてくれました。」

この映画の中で、母親役を演じるアン・ハサウェイ(Anne Hathaway)は、結局は事の成り行きから、自分の息子ポールが裏切ってしまう、黒人のティーンエイジャーを演じるジェイリン・ウェッブ(Jaylin Webb)、さらに祖父役を演じる、アンソニー・ホプキンス(Anthony Hopkins)と共演している。

イェール大学(Yale University)で英文学を学んだボストン出身のジェレミー・ストロングは、『メディア王 〜華麗なる一族〜』の撮影現場ニューヨークとデンマークのコペンハーゲンを行き来する生活の中で、妻のエマ・ウォール(Emma Wall)と3人の娘イングリッド(Ingrid)(4歳)、クララ(Clara)(3歳)、ジョイ(Joy)(1歳)と共に1年の大半をデンマークで暮らしていて、今はちょうど『メディア王 〜華麗なる一族〜』のシーズン4の撮影を終えようとしているところである。

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━━ジェームズ・グレイ監督が横暴な父親のもとで育った記憶をもとに制作したと言われる中、アーヴィングを演じる時に何か困難な事態に直面するようなことはありましたか?

私はジェームズからこの映画の出演依頼を受けたとき、デンマークに住んでいたので、飛行機に乗って監督や彼の家族を会ったり、その他にも役作りのために、たくさんの人々に会って膨大な数の質問をしなければなりませんでした。

当時の僕は、彼の父親が愛したジョークや歌、些細な関心を含めて父親に関するエピソードや物語を見つけることに余念がありませんでしたし、法医学的な観点からもたくさんの探索をしたことを今でも覚えています。ジェームズはただ単に両親の肖像を描いたり、ドキュメンタリーやリアリティショーを制作することには全く関心がなく、むしろ詩的で神話的な描写の追求をしていたような気がします。

━━グレイ監督が家族と共に育った時代をどのように洞察し、どのように感じていたのでしょうか?

私は、この映画には“神話的要素”が含まれていると思います。もちろん、これは当時、ある場所で起きた実際の人たちの物語ではあるのですが、そこにはさらに大きく広がる視点があって、ここで呼ばれる両親とは、ある意味では“普遍的母親像や父親像”を表現しているような気がしています。

テルライド映画祭での上映会の後、ショービジネス界の著名人の1人が私のところにやってきて、次のような感想を語ってくれました。「私たちと世代を共有する多くの人々は、きっと映画の中で“自分たちの両親や父親”を認識するのではないでしょうか? 私自身もこの中で“自分の父親”を垣間見たような気がします。つまり私もまた同じような、さらにもっと酷い経験をしていることに気付いたんです。でも、現代を生きる私の子供たちは、“私は自分の父親が彼なりの表現方法で私を愛してくれていたことは分かっていますが、現代を生きる私の子供たちは、このような愛情表現を理解するのに非常に苦労するのではないかと思います。」

━━この映画は、家庭生活の非常に過酷で恐ろしい側面を描くという点で、非常に深遠なテーマを含んでいるような気がしますが、その点についてはどのようにお考えですか?

基本的には、芸術には常に危険がつきものです。この映画は非常に個人的な経験をもとにした人生の揺るぎない探求であり、そこにはこれを演じる若い役者を含めて、若者が自らの経験を通して無邪気な心を失っていく過程があるような気がしています。

━━あなたの中に潜んでいるかもしれない父親としての残忍さを、認識することはかなり難しかったのではありませんか?

もちろん、この人物像は健全な愛の表現や子育ての形からかけ離れています。でもだからと言って、彼には父親としての愛情が全くないということではなく、そこには“途方もない愛情と残酷さ”が共存しているわけです。

しかし俳優としては、ただ単に自分が演じる人物を裁くことなく、家族や父親との矛盾を理解する必要があるわけです。この映画の中で描かれている残酷さと残忍さから“まるで近づきすぎると叩かれるかもしれないと、暴力を恐れる傷ついた迷子の犬”を想像させられるのです。

━━それに対してあなたは、どのような演技を心掛けていたのでしょうか?

実はそのシーンを現場で再現することは難しい状況だったのですが、バンクス・レペタとしいう勇敢な若い俳優がいて、あのシーンの撮影が可能となったんです。アーヴィングはほとんど無知で無能で、理性的な行動を取る術を知らない人物ですが、俳優としては“なぜ彼がそのような行動を取ったのかということを考えなければならないわけで、それが映画のストーリー展開の中で、とても大切な要素でもあるわけなんです。

Interview © Jan Janssen / Wenn
Photos © WENN.com

後編へ続く・・・。

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