━━ウィリアム(ウィリアム皇太子:ウェールズ公ウィリアム(William, the Prince of Wales)は母親の性格を受け継いでいると思いますか?
ライオネシズ(Lionesses)が勝利を挙げ、その勝利を祝ってウィリアムがトロフィーを贈ったとき、それはただ単にトロフィーをキャプテンの手に手渡すという儀式だけではなく、彼のほほ笑みからは、心温まる愛と祝福の抱擁が見て取れました。そのクリップ写真を見れば、ダイアナ妃が息子たちに残した遺産が何であったかよく分かるはずです。それはまさに、かつてのダイアナ妃の息吹が感じられる瞬間であり、彼女が息子たちに伝えた“ダイアナの正義”だったのではないでしょうか?
━━彼女の性格のいたずらっぽい面について少しお話していただけますか?
ダイアナ妃は冗談を聞いたり、実用的な冗談を言うのが好きな人でした。ダイアナ妃にはリチャード・ダルトン(Richard Dalton)という専属のヘアドレッサーがいたのですが、僕がダイアナ妃と2人でニューヨークから戻ってヒースロー空港から車で自宅に戻る途中で、彼女は冗談めかしてこう言ったんです。「ケン、ちょっとリチャードをからかってみたいの。 彼に電話を掛けて“ニューヨークで披露した髪型にメディアがいちゃもんをつけていた”と言ってみて!」と言うわけです。
そこで僕がアメリカのアクセントで“ニューヨークタイムズの者ですが、あなたがダイアナ妃の髪型の最後の面倒をみたのはいつのことでしたか?”と聞いてみたわけです。ダイアナ妃は車の後ろで笑って聞いていたのですが、私が電話の中で最後に咳込んだとき、電話口の向こうからとんでもない罵声の言葉が戻ってきて、彼女は殊の外、そのジョークを楽しんだようでした。
━━では今までダイアナ妃と一緒に仕事をした中で、一番懐かしいと思う瞬間は何でしょう?
もちろん、ダイアナ妃のような王族と一緒に旅行し、自分の人生ではほとんど見ることができない場所を訪れる機会を手にする特権的な立場にいましたので、懐かしい瞬間は数え上げればきりがないほどたくさんあります。その中でも80年代に彼女と(当時の)チャールズ皇太子(イギリス国王チャールズ3世(Charles III))、そして2人の王子たちと一緒にマヨルカ島に行き、スペインの女王と一緒に過ごしたことがあるのですが、ある晩、ダイアナ妃は私に「ケン、信じられないような話だけれど、バルセロナでホセ・カレーラス(Josep Carreras)に会うことになったの。女王はあなたが音楽好きだと知っているので、一緒に来ないかと言ってくれているのよ。」と言ってきてくれたんです。
そして、バルセロナに行く前に、丘の上にある村でモンセラート・カバリェ(Montserrat Caballe)を観たのですが、それは本当に素晴らしかった! またその他にも、ヴェローナ(Verona)でパヴァロッティ(Pavarotti)のコンサートを鑑賞したことがありましたが、残念なことにコンサートの数秒後に雷雨があり、キャンセルされてしまったんです。そこでダイアナ妃は私に向かって「ケン、コンサートはキャンセルされてしまったし、だったらヴェネツィアに行けないかしら?」と言ったんです。私はヴェネツィアがどこにあるのかさえ知りませんでしたが、その2時間後には私たちはヴェネツィアにいて、クロワッサンを抱えてボートに乗ったところ、同僚がどこかからコンジュールの香りが漂うワインのボトルを用意してくれていたんです。私たちはヴェネツィアのど真ん中にいて、世界中のメディアの誰1人としてそのことを知らなかったわけです。それは本当に並外れた経験としか言いようがありません。
━━あなたは著書の中で、ダイアナ妃が後に少し不謹慎と思われるような人々から影響を受けたという話をしていますが、その当時を振り返り彼女を正しい方向へ導く人がいなかったことを悔やんだりしていますか?
ハイ、しています。私がこれらのタロットカードリーダーと銅のピラミッド科学者について言及したのは、「どうすればこの問題を解決できますか? 間違っているのは私ですか?」というダイアナ妃の助けを求める心の叫びだったからです。彼女の人生には常に孤独な側面が存在していました。世界中を旅し、雑誌の表紙を飾っていましたが、1日が終わり、家に戻ると、そこにはその華やかな生活とは対照的に非常に孤独な存在が垣間見えるのです。
━━悲劇的な死から25年が経った今、彼女が残した大きな遺産は何だったと思いますか?
それは女王(インタビュー当時)(エリザベス女王(エリザベス2世:Elizabeth the Second))、君主制に対する彼女の揺るぎない忠誠心であり、一般の人々を含め、ホームレスや剥奪された弱者の生活をより良くしたいという使命感とコミットメント(約束事)だったと思います。そしてそのダイアナ妃の遺産は今、特にウィリアムによって継承され、死後25年経った今でも人々がダイアナ妃について語る理由の1つではないでしょうか?
ケン・ワーフ(Ken Wharfe)とロス・カワード(Ros Coward)共著による「ダイアナ:プリンセスの思い出(Daina:Remembering the Princess)」(英語版)は現在20ポンド(約¥3,300)で出版中。
Words © Rowan Erlam
Photos © Mirrorpix
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