━━『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』(原題:The Handmaid’s Tale)と『シャイニング・ガール』(原題:Shining Girls,彼女のもうひとつのヒットシリーズ)の撮影現場で自分自身の映画を演出しているときは、きっと多くのストレスが溜まったりしたのでしょうね?
いいえ、そんなことはないわ。監督、演技、プロデュースなどシリーズのあらゆる側面に深く関わり、互いを強化し合いながら作業を推進していているので、ストレスが溜まるようなことはないと思うわ。とにかく、ストーリーのあらゆる要素、制作、スケジュールなどを把握しておく必要があって、自分の感性を研ぎ澄ませば澄ますほど、各シリーズの制作方針に大きな影響を与えることができると思っているのよ。きっと作品作りを含めて、創造的な演出に関わることが好きなんでしょうね!
━━では、監督としていちばん大変なことは何ですか?
(笑)俳優たちが真っ昼間の撮影現場にやってきて、「なぜこのシーンを特定の方法で扱わなければならないのか?」とか「あるシーンや1つのラインが、別のシーンとどのようにつながっているのか?」など、様々な角度からの質問攻めにあったりするときかしら!
たとえば、『シャイニング・ガール』(モスが監督も務めている。)の場合、私たちは8つのエピソードすべての順番を揃えずに撮影したの。だから「何が起きたのか、起きなかったのか。」「その役柄が知っていること、知らないこと。」などを常に気をつけて撮影に臨まなければならなかったの(笑)。
━━女優として自分で演出の方向性を決めながら演技をすることは楽しいと思いますか?
女優として、自分のイメージでエピソードのトーンを決めていく監督作業ができるのはとても楽しいことは確かよ。でもこれは、最初からシリーズに取り組んできたので、その方法をすでに理解していると感じている私の場合には特に当てはまることではないかと思うわ。
監督が物語の展開に深い視点を持つ必要があるように、私は監督を始める前から女優として各エピソードがどのように構成されているかを常に理解しようとしていたの。だから、私はできるだけ作家と一緒の席に座って、特定のシーンが他のシーンとどのように結びついているかなどについて、常に作家とディスカッションをするよう心掛けていたわ。
━━ 7歳からショービジネスで働いていますが、演技をすることはいつもあなたの夢だったのでしょうか?
そう。私の両親はどちらもミュージシャンだったし、そんな家族から突然医師や弁護士になりたいと思うような子供が生まれてくることはあり得ないし、もし私がそんなことを口にしたら両親はおそらく私をクレイジーと呼んだのではないかしら?いずれにせよ、いつも何か芸術に関わることをしたいと考えてはいたけれど、かなり早い段階から自分には音楽的な才能はないと感じていたことは確かよ。
それよりも、私はバレエや演技の方に興味があったの。とにかく、自分は今でも女優以外には何ができるか分からないし、誰かから「今日であなたの女優としてのキャリアは終わりです。」と言われたら、私はきっと“ただの無能な人”にしか見えないかもしれないわ。
━━演技そのもののプロセスについて、あなたが最も愛していることは何ですか?
私にとって演技は、無限の感情や思いを探求することを可能にする空間なの。真の自分を知らずに、無意識のうちに自分を欺くことは決して精神的健康を手にすることにはならないと思うの。
でも、私は幸運にも自分が手にした女優という役割のおかげで、今まで自分でも気付かなかった“己”を発見することができたのだと思うの。別に殊更人類を救っているわけでもないし、特に自己愛が強いというわけではないけれど、現在の私は自分の5歳のときの“原型”で、あの頃部1人部屋で遊んでいるとき王女のふりをしていた自分とそれほど変わっていないのだと思うわ。
━━あなたは過去20年間、『マッドメン』(原題:Mad Men)をはじめ、ジェーン・カンピオン(Jane Campion)監督の『原題:トップ・オブ・ザ・レイク』(Top of the Lake)を含めいくつかの素晴らしいテレビ番組に出演し、並外れた成功を収めてきましたが、特にテレビのお仕事の方がお好きなんですか?
テレビの仕事は、数年かけて演技の中でのキャラクターを成長させることができ、時間の幅があるという点でとても気に入っているのは確かよ。映画とは一味違って、シリーズを通して自分の役柄の心の移り行きや成長を探求し楽しむことができる醍醐味はやはり私にとっては捨て難い魅力なの。限られた時間の範囲内で制作しなければならない映画には“制作の過程で育てはぐくむ”ということは難しいですものね。
━━『シャイニング・ガール』や『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』のような、どちらかというと暗い役を演じることで有名なあなたが、ロムコム(ロマンティック・コメディ)に挑戦してみたいという願望を持っているのは本当ですか?
実は私はロムコムの大ファンなの。実際にロマンティック・コメディやコメディを見るが大好きで、チャンスがあればいつか挑戦してみたいと密かに考えていることは確かよ。でも正直言って、シリアスなドラマは自分を“快適ゾーン”から突き放した末に、自分をどこまで追い込めることができるかという挑戦を突き付けられるようで、そこにはたまらないワクワク感があるの。
エリザベス・モスによる上記のコメントは、現地時間4月28日に開催された『シャイニング・ガール』最新プレミアを記念してZOOMインタビューを行った際のものであり、さらに2月4日(金)にウインターThe Winter Television)批評家協会ウインター・プレス・ツアーの一環として開催されたシャイニング・ガールズ・パネルへの出演中に彼女が行った追加のコメントで、長さの調整ため編集されたものである。
Interview © Jan Janssen / Wenn
Photos © WENN.com
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