OK! インタビュー
ブラッド・ピット
“マネーボール”
ブラッド・ピットは一度約束したら必ず実行する男性!
日本では、11月11日(土)から全国公開される、最新映画「マネーボール(原題:Moneyball)」の中でオークランド・アスレチックス(Oakland Athletics)のジェネラル・マネージャー、ビリー・ビーン(Billy Beane)役を演じるブラッド・ピット(Brad Pitt)。
この映画は、マイケル・ルイス(Michael Lewis)による2003年度ノンフィクション・ベストセラー小説を映画化したもので、物語は赤貧状態で苦しむチームを独自の法則で改革して行くと言う内容の野球映画である。
この映画が陽の目を見るまでには、2人の著名な監督が去り、スタジオからの制作打ち切りがあったりと様々な困難ががあったが、トロント国際映画祭(Tronto International Movie Festival)の会場でブラッドは“このいわくつき”の映画を最終的に彼が手掛ける事になった経緯について自身の心境を次のように語っている。「僕自身にも説明は出来なのだけれど、この作品に関してはどうしても制作を諦める事が出来なかったんだ。」
現在ロンドンとスコットランドのグラスゴーで、スリラー映画「原題:ワールド・ウォー・Z(World War Z)」を撮影しているブラッド。そして彼は、パートナーのアンジェリーナ・ジョリー(Angelina Jolie)と共に6人の子供達と過ごす家族の時間が何より楽しいと語っている。
オクラホマ生まれのブラッドは、ミズーリ大学でグラフィック・デザイン・コースを学んでいたが、俳優になりたいと言う想いから大学を中退し、両親や友人にはパサデナにあるアートセンター・カレッジに行くと嘘をついて、自身の車ダットサンを運転して1人ハリウッドに向かったと言う。
そして、1995年のアカデミー候補作品「12モンキーズ(原題:Twelve Monkeys)」への出演に引き続いて見事ゴールデン・グローブ賞を獲得したブラッドだが、2000年に出演した「スナッチ(原題:Snatch)」でも既に役者としての類稀な才能を認められている。
又、2001年ジュリア・ロバーツ(Julia Roberts)と共演した「ザ・メキシカン(原題:The Mexican)」やその翌年のロバート・レッドフォード(Robert Redford)との共演作「スパイ・ゲーム(原題:Spy Game)」はあまり大きな話題を呼ばずに終わったが、2004年のアクション映画「トロイ(原題:Troy)」ではアキレス(Achilles)を演じ、US$133 Million(約106億円)と言う興行収入を上げたブラッド! そして、その素晴らしい演技を評価されて、その後2004年には「ティーン・チョイス・アワード(Teen Choice Award)」受賞の栄誉に輝いている。
でも現在、大スターのブラッドが荷物1つでハリウッドへ向かった事や、生活費を稼ぐ為にフライド・チキン・レストランの「エル・ポヨ・ロコ(El Pollo Loco)」のユニフォームを着て仕事をしていたなんてちょっとおかしくて想像できないような話ではあるが・・・。
又、「テルマ&ルイーズ(原題:Thelma & Louise)」の中でヒッチハイカー役として主演のジーナ・デイヴィス(Geena Davis)と濡れ場を演じた若き日のブラッドのセクシーな魅力はその当時から話題を呼び、今でも世界中の数多くの女性ファンが「最もセクシーな男」と言って憧れるブラッドではあるが、 “セックス・シンボル”の称号は抜きにして、俳優としての自分を“良い役者だとは思うけれど、類稀な才能を持った役者と言う訳ではないと思う”と客観的に評価している。
そしてアンジェリーナ・ジョリーとの間に大家族を抱えるブラッドは、自身の制作会社「プランBエンターテイメント(Plan B Entertainment)」の成功と共に常に世界の注目を浴びる存在である事は間違いない!
普段撮影のスケジュールが無い時は、アンジーと子供達と共に世界中を旅するブラッドは、父親として子供達を見守る時間が何にも増して幸せで最も意義を感じる瞬間と現在の心境を率直に語っている。そこで今回は、ベジタリアンで人権保護運動に力を注ぐ慈善家として知られるブラッドに「ミッドライフ・クライシス(中年症候群)」、「父親像」「アンジェリーナとの生活」などについて自身の心境を語ってもらう事にした。
---「マネーボール」のどのような面に惹かれたのですか?
非常に複雑な題材だし、ストーリーやそれぞれの役柄自体“月並み”ではない点!
だから様々な側面からの制作準備が必要だったし、沢山の人達がこの映画制作に取り組もうとしたけれど、なかなか実現出来なかったのだと思う。
---あなたがこの脚本に心を動かされた点についてもう少し具体的に説明して頂けますか?
つまり、最終的には「人間性」、「成功と失敗」などに関わる、生きて行く上での我々の価値観の定義に惹かれたのだと思う。この世の中の価値観は、往々にして偏見と人種差別に満ちていているからね。映画の中でもアンフェアなゲームを始め、様々な不公平なシーンが出て来るけれど、思えば70年代の多くの映画は、そうしたテーマを掲げて制作された作品で、結局の所、突き詰めてみるとそれが「生きて行く上での人間としての価値観」と言う事に言及されると思うんだ。この映画は「マネーボール」と言う題名の本を映画化したもので、映画に出て来る、それぞれの男性達がいかにアンフェアなゲームに打ち勝って行くかを描いたノンフィクション・ストーリーなんだ。
---ではこの映画は「正しい事と誤り」「正義と不正義」の問題について疑問を投げかける作品なのでしょうか?
確かに「昔から続いている慣習だからそれが正しい事なのか?」と言う疑問を持った男たちが、その状況に立ち向かって行くと言ストーリー展開に惹かれたと言うのは事実だね。例えば、車を発明したからと言って、それがどこか他の国での紛争に悪用されたりする不正義、でもそれはあくまでも経済活動の一環に過ぎないのではないかと言う単純な疑問が僕の中にいつもある事は否めない事実だしね。
---この映画があなたに与えてくれた価値観とは?
僕は、クリスチャンの両親の下で生まれ育って、家族の愛に見守られながら非常に健康的な環境の中で育って来たんだ。でも小さい事からいつも「サタニズム(悪魔)」と言う事に疑問を持っていて、大人になって新しい事に挑戦が出来るようになってから、そうした事を題材にした映画を制作するようになったと言う経緯があるんだ。つまりずっと疑問を持ち続けていたある種の問題に対して、成長した後に自分自身の体験を通して、何が自分に合っていて何が合っていないか、その答えを出して前に進むと言う作業は誰にとっても必要で当然の行為なのだと思う。
---この映画は、あなたの幼い頃の思い出と何か特別ながりがあると言う事なのですか?
あくまでも漠然とした感覚でのつながりはあると思うけれど、でもそれは小さい頃の些細な思い出で、はっきりと口に出して答えられるレベルでの問題ではないと思う。スポーツ映画は勝つか負けるかと言う、もっと単純な人間本来の闘争意識を刺激していると思うし、テーマが絞りやすいよね。だから僕たちはスポーツ選手のヒーローを崇拝するのではないかな?
---その他には何かありますか?
僕は子供の頃「原題:バッド・ニュース・ベア(The Bad News Bears)」(コメディー映画)が大好きで、ダラス・フォーティー(Dallas Forty)のニック・ノルティ(Nick Nolte)の大ファンだったんだ。多分そうした子供の頃の思い出が僕の心の中に残っているのかも知れないね。
---最近の映画業界は俳優たちに十分な報酬を払っていないなど、その待遇に何か問題があると思いますか?
僕は、自分の琴線に触れると思う作品ならお金に関係なく関わってみたいと思っているし、もし僕に指名があったらそんな問題はないと思うよ。最近はデジタル・カメラを使って少ない予算でも自分達が作りたいと思う映画制作が出来るような時代で、今までなら、はなかなか発掘出来なかった才能が見出されるようになってきていると思う。つまり時代は常に変わっているし、我々はそれに対応する能力を身につけるべきではないかと思うね。
---今までの人生の中で、やり残しているような事や、これから先成し遂げたいと思うような事とは? それから40歳になった時に「ミッドライフ・クライシス(中年症候群)」を感じたような体験は?
現在の自分の人生に十分満足しているし、今までの人生を振り返って後悔したり、やり残したと感じる事は全くと言って良い位ないと思うよ。今まで自分が下してきた人生の選択や間違いには自分が責任を負わなければならないしね。
---あなた自身について少し語って頂けますか?
僕は、いつでも間違いの中から何かを学ぶ事が出来ると信じているし、そこから本当の自分を理解し、自分を好きになる事が出来るのだと思っているんだ。
---アンジェリーナの一番素晴らしい点は?
僕たちの関係に対する個人的な質問については出来るだけ答えないようにしているけれど、1つ言えるとすれば、彼女は行動力に溢れた賢明な女性で、驚くほどに「礼節」を心得ている女性だと思う。そして何よりも6人の子供達に対する素晴らしい母親である事は間違いないね。
---父親としてのあなたの感想は? そしてこれから先も子供が欲しいと思っているのでしょうか?
父親としての営みは、僕にとって人生最大の試みで本当に素晴らしい経験をさせてもらっているよ! だから僕達にとって、これから先も子供が増える事には何の問題もないんだ。
---6人のお子さんたちを良く映画祭に連れて行ったりしていますが、大変ではありませんか?
一対一で向き合う方が簡単な事は確かだけれど、どちらにしても彼らと一緒にいると一人一人の時間がそれぞれに楽しいんだ! 実際、彼らは僕が知っている人間の中で1番興味深くて面白い生き物だと思うね!
---最近のあなたの出演映画を観ていると自分自身の内面や宿命を模索するような作品が多いようですが?
僕は、自分の人生は自分で築き上げるものだと思っているんだ。様々な気付きの中から
自分探しをして、自分自身を認めて好きになる事が大切なのだと思うし、いずれにしても自分の人生には自分で責任を持つと言う事を肝に銘ずるべきではないかな?
---“有名人”や“最もセクシーな男”と呼ばれる事についてはどのように思っているのでしょう?
自分がいわゆる“有名人”だと意識した事はないんだ。でも僕も人間だから、あまり頻繁に私生活に立ち入られたりすると、イライラするような事もあるのは確かだよ。しかし、そうした事にも対処する方法を学びながら、出来るだけ大きな視点から物事を客観的に見ようと努力しているんだ。それに僕は、いつも何かに疑問を投げかけるタイプの人間で、それが僕をクレージーにも正気にもさせる原動力になっているのだと思うよ。
---ご自分の事を“映画スター”だと思っていますか?
特にそんな事を考えた事はないね。演じる事はあくまでも表現方法の1つで、今はただそれを楽しんでいると言った感じかな!
---ジョージ・クルーニー(George Clooney)と仕事をするのは楽しいですか?
かなり多くの作品で共演しているし、彼と一緒に仕事をするのは本当に楽しいよ!
---どのような役柄を演じるのがお好きですか?
いつも間違った選択をするような不完全な男を演じるのが好きなんだ。愚かな間違いを犯し、そこから何かに気付いて物事を変えて行くと言う過程から色々な投げかけが出来ると言う役柄に興味を覚えるんだ。
---アンジェリーナとのセクシーな共演作、2005年の映画「ミスター&ミセス・スミス(原題:Mr. & Mrs.Smith)」以来お二人は一緒に仕事をしていませんが、近々何か共演する事を考えているのでしょうか?
アンジェリーナと僕はいつも共演しているよ。でもそれは映画の共演ではなくて家庭の中での“父親”と“母親”役としてと言う意味だけれどね。
---分かりました。ではこれからのあなたの計画は?
まずは、現在手掛けている映画を完成させる事。そして勿論、家族と一緒に過ごす時間を持つ事!
---ではこれでインタビューを終えますので、ゆっくりと休んで下さい。
それは素晴らしい! 年を取るとにつれて睡眠は大切になるからね。