━━本作ではベン・キングズレー(Ben Kingsley)(引退した精神科医イブラヒム(Ibrahim)役)との再共演もされていますが、どのようなご感想でしたか?
ベンと私が演劇で俳優として駆け出しの頃のことを、とても懐かしく思い出します。2人とも本格的な俳優を目指していたのに、なぜ別々の道を歩むことになったのか不思議です。もちろんベンは長年にわたり素晴らしい功績を残してきました。こうして彼と再び時間を過ごし、親交を深めることができたのは、本当に特別なことでした。
━━本作はNetflixで全世界配信される1週間前に、一部の劇場でのみ上映されます(インタビュー当時)。オンライン視聴への移行が進んでいることについて、どのようにお考えですか?
自宅で大画面で映画を見るのはとても快適で簡単ですが、外に出て、薄暗い劇場で、ずっと大きなスクリーンに包み込まれるような感覚で映画を見るという行為は、やはり非常に重要で不可欠なものだと私は思います。ニューヨークで『木曜殺人クラブ』を見ましたが、400人ほどの観客で、笑いが絶えませんでした。観客と体験を共有することほど素晴らしいことはありません。
━━あなたのキャリアにおける素晴らしい役柄の1つは、『第一容疑者』(原題:Prime Suspect)のジェーン・テニスン(Jane Tennison)警部役でしたね。『木曜殺人クラブ』でエリザベスを演じた際に、あのキャラクターの記憶を参考にしたことはありますか?
特には。もちろんエリザベスには、ある程度の真剣さと決意を持たせる必要がありましたが。でも、これまでの私の役柄ほどタフだったり、対立的だったりはしません。確かに、時には口論になることもありますし、若い頃はもっとそうでした。自分が正しいと思った立場は守りたいですし…でも、以前ほど自分の立場を主張することにはこだわっていません。
━━映画の撮影現場にいるのは今でもワクワクしますか?
仕事が大好きです。この歳になっても何か違うことに挑戦し続けることが、私にとっての面白さです。私は『バービー』(原題:Barbie)から『1923』、『木曜殺人クラブ』、『原題:モブランド』(MobLand)と、様々な役をこなしてきた女優です。どう思いますか?(笑) 人生で常に色々なことを試していれば、決して飽きることはありませんよ。
プロジェクトを選ぶときは、直感に従うのが好きです。感じたら、ただ従うだけです。人生における他の選択と同じです。もちろん、間違えることもありますが、それはそれでいいんです。人生とはそういうものです。長い年月をかけて、間違いよりも正しいことの方を願うのです。
━━有名な監督であるご主人(テイラー・ハックフォード(Taylor Hackford))とは仕事の話をよくしますか?
あまりそうじゃないですね。彼が監督を務めている映画なら、「どうだった? 撮影はうまくいった?」と声をかけます。そして、彼が撮影しているときはいつも天気が良いように祈っています。
仕事中は、彼が「今日は大丈夫だった?」と聞いてくれます。仕事の喜びも苦労も、すべて分かち合っています。素晴らしい、愛情あふれるパートナーシップです。
━━今でも映画の宣伝やプレミア上映会、授賞式への参加を楽しんでいますか?
大抵は楽しいです。ピアース(・ブロスナン(Pierce Brosnan))、ベン、セリア(・イムリー(Celia Imrie))と一緒に『木曜殺人クラブ』の取材活動も、撮影現場で一緒にいたときと同じくらい楽しかったです。プレミアではおしゃれするのも好きです。
いつもスワッガー バッグを持ち歩いて、素敵なメイクをして、自分に自信を持てるようにしています。たまには派手なメイクをしてみるのもよいと思います。自信があると、美しく、積極的になれます。人生において、あまり礼儀正しくなりすぎたり、申し訳なさそうにしすぎたりしないでください。
━━演技に興味を持ち始めた10代の頃の思い出を教えてください。
我が家には映画館や演劇に行くお金はなく、家にはテレビもありませんでした。しかし15歳のとき、母に連れられてアマチュア公演の『ハムレット』(Hamlet)を見に行ったんです。劇場を出たときの私は、すっかり変わってしまったような気分でした。
その瞬間から、女優になりたいと思い、シェイクスピア(Shakespeare)作品だけをやりたいと思ったんです。それほどまでに夢中になり、最初の役はクレオパトラでした。シェイクスピアの物語を舞台で生き生きと表現することが、私の存在意義となったのです。
━━今後のプロジェクトの選択に関しては、今後もさまざまな組み合わせでやっていくつもりですか?
人生と同じように、仕事にも紆余曲折があって、それが好きなんです。20代の頃は、自分の人生がどこへ向かうのか、全く分かりませんでした。30代、40代も同じです。全く見当もつきません。すべてが冒険です。計画も期待もしません。人生はいつものように、突然襲いかかってくるんです。
━━あなたとご主人は17年間イタリアに住んでいらっしゃいます。イタリアの田舎での暮らしを振り返ってみてどう思いますか?
ローマで『カリギュラ』(原題:Caligula)の撮影を3ヶ月間続けて以来、イタリア文化全般に魅了されてきました。豪華なランチやディナー、パーティーを楽しみながら、人々が何を話しているのか理解するのに苦労したのです。でも、イタリア人はそういう場になると本当に素晴らしい精神力を発揮するので、それが私に深い感銘を与えました。
古代遺跡、教会、美術館、ダンテ(Dante)やフェリーニ(Fellini)といった、もちろん大好きな作品にも魅力を感じますが、イタリアで本当に一番楽しいのは、日々のありふれた生活です。イタリア語もここで過ごすたびに上達していますが、まだ思うほど流暢にはなっていません。
━━イタリアでの典型的な1日はどんな感じですか?
私は、私が住んでいるロウワーサレント(Lower Salento)地方の美しい町、ティッジャーノ(Tiggiano)を散策するのが大好きです。自転車に乗ったり、お昼に広場でカプチーノを飲んだり、スーパーで必要なものを買ったり。町のみんなと同じように、ごく普通の生活を送っています。そんな生活の奥深いシンプルさを味わうことに、大きな喜びを感じています。私はここでイタリア人女性として暮らしています。
━━あなたは自分自身をファーマー(農業を営む人物)と呼ぶのが好きですね。それはなぜですか?
テイラーと私は800本のザクロの木を育てていて、実を手で搾ってオーガニックジュースを作っています。私は野菜畑の手入れもしていて、トマトなどの野菜を収穫しています。私は自分の庭が大好きです。私たち夫婦がうまくいっている秘訣は、一緒に手仕事をすることなんです!(笑)
上記のヘレン・ミレンのコメントは、現地時間8月15日にニューヨークで行われた映画『木曜殺人クラブ』(原題:The Thursday Murder Club)ワールドプレミア上映後に行われたものです。コメントは、長さと分かりやすさを考慮して要約・編集されています。
Words © Jan Janssen / WENN
Photos © Phil Lewis / WENN
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