しかし、ウィリアムズ姉妹のメンター、コーチ、そして父親であるリチャード・ウィリアムズ(Richard Williams)の期待に反して、2人の娘をまるで子供扱いするようなアカデミーのトレーニング方針に疑問を抱いた父親は、ビーナスが11歳になったとき、トーナメントに参加する選択を取りやめ、姉妹に普通の子供らしい生活を送る教育方針に切り替えている。
ちなみに、リチャードのモットーの1つは「常に闘争心を忘れず、タフな肉体と精神を兼ね備えた選手であれ!」であり、さらに「1に神への信仰、2に家族を思う気持ち、3に教育、4にビジネス、そして最後の5番目にテニス」という私信を姉妹に向けて明確に伝えることを忘れていない。
それまで常に白人社会に牛耳られていたテニス界だが、“その歴史を変える”というビジョンを掲げて自身の意志を貫き通した父親の偉業を振り返り「今までのテニス界のイメージに全くそぐわない、2人のアフリカ系黒人姉妹をテニス選手として世に送り出す人物がいるなんて誰が想像できたと思う? 父の不屈のビジョンなくして、今の私はあり得ないの!」と語るセリーナの言葉に頷くビーナスもまた「父は信じられないほど、将来を見据える洞察力を備えた人だと思っているわ。そしてセリーナも私も、幼い頃からその父の強い思いを信じてついてきたから、今の私たちがあるのだと思っているの。」と父の強い信念に対して尊敬の念を込めて熱く語っている。
たとえコート上で敵同士として戦うことがあっても、2人は人生を通して最大の親友と語るウィリアム姉妹だが、この2人は今までグランドスラムの決勝戦で31回戦い、セリーナ19勝、ビーナス12勝という結果を出している。
しかし、コート上でどんなに激しい戦いを繰り広げても、互いを称え合う心を忘れない姉妹!そして姉のビーナスを「自分のヒーロー」と称賛して止まないセリーナは「ビーナスなくしてセリーナは存在しないし、姉はいつまでも私のヒーローなの。」と語り、ビーナスもまた「彼女なくして、私の存在はあり得ないし、私たち2人はいつも運命共同体なの。」と賛辞のメッセージで応えている。
しかし、富だけではなく、心の痛みさえも共に分かち合うウィリアム姉妹は、2003年、2人のパーソナルアシスタント(専属秘書)を務める姉のイェツンデ(31歳)がドライブ中にトラブルに巻き込まれて射殺されるという悲しい出来事に経験し、さらに2002年、姉妹の母と離婚した後、2回の再婚を経験している父親は、2015年以降は健康を害し、常に2人のそばにいてテニス活動を見守ることができなくなるという悲しい事態にも遭遇している。
2017年、セリーナがレディット(Reddit)の創始者、アレクシス・オハ二アン(Alexis Ohanian)と式を挙げた際、認知症のため一緒にバージンロードを歩くことができなかった父親リチャードだが、その悲しみについて「もうテニスコートで応援してくれない父親のことを思うと寂しい思いをしているの。」と公式な場で自身の正直な気持ちを打ち明けるセリーナ!
既に4歳になる娘のアレクシス・オリンピア(Alexis Olympia)の母親となったセリーナだが、「当時は確かにとても寂しい思いでいっぱいだったけれど、今は式の途中で何かがあってはいけないと心配するあまり、バージンロードを一緒に歩くことができなかった父の気持ちがよく分かるようになったわ。」と、理解あるコメントを残している。
現在は独身生活を謳歌している姉のビーナス(41歳)だが、妹のセリーナ(40歳)と共にテニスコート以外のビジネスでも成功を収める姉妹2人は、今もなおテニス界に君臨する素晴らしい女王! ファンの皆はそんな2人が繰り広げる今後の活躍から目を離すことができない!
Words © Rhona Mercer
Photo © WENN.com
END.