そしてその転向の3年後に、北京大会で女子ロードレースのデビューを飾ったサラは、見事金メダルを手にし、その他にも29回の世界チャンピオンの座に輝いている。ちなみに、29回の勝利のうち6回は水泳競技によるものである。
しかし、栄光の道はそれほどたやすいものではなく、彼女の類まれなる“アスリートとして野望”は、小さい頃からしばしば“いじめの対象となった”らしく、サラはその当時の辛い経験を思い出しながら次のようなコメントを残している。
「学校ではいつも1人孤立していたし、それはやはり寂しい思いをしたけれど、でも水泳仲間や自分のキャリア、そして水泳に対する夢が私を支えてくれていたのだと思うわ。だって、私のスポーツのキャリアは学校でのいじめよりはるかに長く続くものだと信じていたから!」
しかし、だからといって、そうした“いじめ”が彼女に全く悪影響を及ぼさなかったといったら、それは嘘になる。事実、彼女はいじめが原因で“拒食症”という厄介な病気に掛かり、「あの頃の私は食べることをコントロールすることくらいしかできなかったの。」と当時の辛い心境を打ち明けている。
その後、彼女の異変に気付いた両親が掛かり付けの病院に彼女を連れて行き、診察を受けたというが、結局“食べ物は自分がスポーツを続けるために必要な潤滑油”と自身のマインドをコントロールする術を手にしたサラは、見事病気を克服し、自身の食生活を管理するために“食べ物日記”をつけるようにまでなったという。
そして全てを乗り越え、強靭な意志の下、トレーニングを続けたサラのたゆまぬ努力は見事花咲き、2013年には「大英帝国勲章」受勲の栄誉に輝いて「デイム」の尊称を手に入れている。
パンデミックで“先が見えない挑戦の毎日”の中、2人の子供たちの自宅学習で母親業をこなしながら黙々とトレーニングを続けたサラだが、東京大会では“絶対に勝つことができる”自信があったと語り、さらに次のようなコメントも残している。
「2週間は緊張状態に陥ったけれど、でもそれは決して悪いことではないと思っているの。ただ自分の緊張に周波数を合わせて、緊張を自分の味方につければよいだけのことだから!」
そして現在、ご主人と共同経営する“モチベーションを引き出す”ことを目的とした会社、「チーム・ストーリー・スポーツ(Team Storey Sport)」を通して“勝つための極意”を伝授する支援活動に力を注いでいるというサラは、会社の使命について次のように述べている。
「夫のバーニーと私は個々のサイクリストの目標にそれぞれ合うオーダーメードのコーチングを提供することに力を注いでいるの。」
そして、貪欲に勝利を目指すサラは今から3年後に開催されるパリ大会でもさらに金メダルを総なめするべく、既に訓練に励んでいるという。
世の中には、成功を手に入れた後は長い休暇を楽しみたいと考える人もいる中、自らにハードルを課して訓練に励むサラだが、そのコメントはまさに強靭そのもの! そしてサラは自身を戒めるように次のようなコメントを残している。
「限界を乗り越えて常に最高の自分を生み出す挑戦がアスリートとしての私の原動力なの。」
Words © Lisa Marks
Photos © WENN.com
END.