世界で最も才能溢れる歌手の一人と、著名なフォトグラファーを両親に持ち、その素晴らしい才能を引き継いで生まれたといえるステラ・マッカートニー(Stella McCartney)!
しかし、親から引き継いだ恵まれた才能だけではなく、自身で立ち上げたファッションブランドはその努力と献身の賜物として、現在約70億円(£50million)の価値を持つ企業に成長している。
1971年9月13日、ロンドン カンバーウェル(Camberwell)に生まれたステラは、ポール(ポール・マッカートニー卿:Sir Paul McCartney)とリンダ(リンダ・マッカートニー:Linda McCartney)の4人の子供のうちの1人。長女のメアリー(Mary)、次女のステラ、長男のジェームス(James)と3人の子宝に恵まれたカップルだが、父のポールはそれ以前にリンダの娘、ヘザー(Heather)を養女に迎えている。
著名人として知られる夫妻だが、子供たちにはできる限り普通の生活を送ってほしいと願う夫婦の意向で、子供たちはサリー(Surrey)地区にある自宅近くの学校に通っている。そして、子供時代を振り返り、ステラは知名度のある両親を持つ子供として、次のようなコメントを残している。
「もちろん、子供心にも両親が有名人であることはいつも分かっていたわ。でも、多分私はそれを特別に考えることもなく、ごく普通のこととして捉えていたと思うわ。でも、ある日マイケル・ジャクソン(Michel Jackson)に会っていたかと思えば、次の日は馬に乗ったり、スクールバスで普通に学校に通ったりするような生活を送っていたなんて、今考えれば自分でもちょっと不思議な感じがしているわ。」
子供の頃からファッションに関心を持っていたステラは、13歳のときには既に自ら“rstジャケット”をデザインしていたという。
そして、その3年後にはインターンシップ実習生として、フランス人ファッションデザイナーのクリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)の下で学び、さらにロンドン サヴィル・ロウ(Savile Row)通りにある、ポール御用達テイラーのエドワード・セクストン(Edward Sexton)で研鑽を積んでいる。
そのようにしてファッションの基本を学んだステラは、1990年初期にロンドン芸術大学のセントラル・セント・マーチンズ・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン(Central Saint Martins College of Art and Design)に入学し、1995年の卒業コレクションで披露したショーには、普段から親しく付き合っている、ケイト・モス(Kate Moss)、ナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)、ヤスミン・ル・ボン(Yasmin Le Bon)などのトップモデルが舞台を飾り、ヘッドラインニュースとして話題を集めている。
後にBBCラジオ4放『デザート・アイランド・ディスクス(Desert Island Discs)』のカースティ・ヤング(Kirsty Young)インタビューに答え、当時を振り返りながらステラは次のようなコメントを残している。
「彼女たちは私がカレッジで学んでいた学生時代の友達で、特にケイトとはしばらくの間ルームメイトとして一緒に住んでいた仲だったの。だから、自分の卒業コレクションにはごく自然に彼女たちに頼んでみようと思ったわけ! もちろん、なぜそんなに話題になったのか、そして同期の卒業生仲間たちが不公平だと思っていたことは分かっていたけれど、でもあの瞬間の“ブリット・モーメント(Brit moment:イギリスの真骨頂)”は今でも私の脳裏に焼き付いているわ!」
卒業後はフランスのラグジュアリーファッションブランド「クロエ(Chloe)」に迎えられ、クリエイティブ・ディレクターとして仕事を始めたステラだが、その翌年には母のリンダ(56歳)を乳癌で失うという不幸に見舞われている。
そして母の死後、精神的な病に陥ったというステラは、その喪失感から逃れようとして一時「トランセンデンタル・メディテーション」(超越瞑想:Transcendental Meditation)の救いに頼ったことがあったという。
ちなみに、「トランセンデンタル・メディテーションは、1960年代に父のポールが実践して有名になった、ヒンドゥー教に由来するマントラ瞑想法で、ステラは“自身の心を救ってくれたこの経験”について次のように語っている。
「母が亡くなったとき、その喪失感の大きさから心の救いを求めるために、父と弟と私の3人は、インド人でヒンドゥー教導師のマハリシ・マへーシュ・ヨーギー(Maharishi Mahesh Yogi)に会いに行ったの。当時の私はあまりの悲しみのために感情が抑圧されて、それが肉体的にも影響してパニック発作を起こすようになってしまったの。」
Words © Anna Matheson / OK! Magazine
Photo © Pete Mariner / Mirrorpix
Photo © Mirrorpix
後編へ続く・・・。