━━結局、医師は何と言ったのですか、ビクトリア?
ビクトリア:それが「1週間後に誰かご家族の方と戻ってきてください。」と伝えられたの。以前にも家族ががんに掛かったときと同じような状況で、決して耳にしたくない言葉だったわ。
━━医師はあなたに“がんの可能性があるかもしれない”と伝えたのですか?
ビクトリア:いいえ、でも医師からは「その懸念もあって心配している。」と言われただけなの。
━━ジョニー、今回の出来事について、どのように思っているのでしょうか?
ジョニー:それはとてもショックだったよ。最初は多分大したことはないだろうと思っていたのが、突然深刻な結果になってしまったわけだからね。
━━結果が出るまでの1週間はどのように過ごしたのでしょうか?
ビクトリア:がんの可能性があることを家族に伝えて、心配を掛けなければならないことを考えると、とても申し訳ない気持ちでいっぱいだったわ。実は私は家族の中で9人目のがん患者で、5人目の乳がん患者なの。家族の中で、もう1人がん患者が増えるなんていう不幸なニュースは誰にも伝えなくなかったわ。
━━それで、翌週病院へ行ったときの結果は、どうだったのですか?
ビクトリア:病院のソーシャルワーカーはとても優しかったけれど、次に医師からどんな話がくるのか、私には分かっていたの。だから、私自身は心の準備ができていたけれど、でもジョンの気持ちを考えると、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだったわ。ジョンと2人で手を繋ぎ合って座って、“大丈夫”というように私が彼の手を強く握ると、彼は私を安心させようとして、ちょっと面白い表情で見返してきたの。
そのとき一瞬、「ジョンには悪いニュースを伝えたくない。」という思いが脳裏をよぎったのを覚えているわ。でも結局その“悪い予感”は的中して、医師からは4センチメートル強のがん細胞が見つかって、乳房切開手術をする必要があると伝えられたの。私の場合は、いわゆる「非浸潤がん」で、DCIS(Ductal carcinoma in situ)と呼ばれるステージ0の乳がんだったの。だから転移することは、ほとんどないというのが不幸中の幸いだったかもしれないわね。
━━ジョニー、あなたの反応は?
ジョニー:もちろん、とてもショックで、どうしようもない気持ちになったよ! できれば嘘であってほしいと思ったけれど、でもそれが現実だと受け止めてからは、ビクトリアの前でうろたえるような姿を見せることはなかったと思うよ。もちろん、不安でいっぱいだったけれど、でも強くいなければならないと自分に言い聞かせるように努力していたんだ。しかし今思えば、本当は「ある朝目覚めて、そのまま1ヶ月間ベッドの中にいたい…」ような心境だったよ!
━━お母様の反応はいかがでしたか、ビクトリア?
ビクトリア:母はいつも私に希望を与えてくれる太陽のような人で、私のアンカー(礎)でもあるの。同じがんを患った経験を持つ理解者で、いつどこにいても私を支えてくれる最大の支援者でもあるの。
━━がんのステージについて、医師の診断はいかがでしたか?
ビクトリア:がんの中でもいちばん軽い「ステージ0」で“非浸潤性乳管がん”と呼ばれる転移性のないといわれるがんなの。
━━難産でお子さんを出産した後、やっと回復し始めていた頃かと思いますが、その状態でがんの宣告は、かなり厳しいものでしたでしょうね?
ビクトリア:全くといってよいくらい考えられないことよね。難産の末、やっとの思いで母親になることができたと思ったすぐ後に、他の問題が身に降りかかるなんて、あの時は人生は公平ではないと感じたわ。そしてがんの宣告を受けたあと、思わず「お願いだから、もう少し時間をちょうだい!」と自分に語りかけたことを覚えているわ。どんなに前向きに考えようとしても、将来が見えない不安に打ちのめされそうになったし、とにかくとても怖かった! あのときほど、生まれたばかりの子供の面倒も見なければならないし、これから先もずっと家族と一緒に生きていきたいと切に願ったことはなかったわ。
━━かなりのストレスを抱えることになったかと思いますが、その点についてはいかがでしたか?
ジョニー:ビクトリアは結構落ち着いていたけれど、僕のストレスはまさに頂点に達していたと思うよ。でも、今はやらなければならないことが見えているから、何となくストレスも和らいできたけれど、でも“待つ”ということの辛さを感じていることは確かだよ。でもとにかく、差し迫る困難から逃げずに、ベストを尽くしてやるしかない!
ビクトリア:今回の「がん宣告」に関しては、彼を含めて家族全員が打ちのめされているわ。
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STYLING: RYAN KAY HAIR AND MAKE-UP: NATASHA EKANOYE
Vol.3へ続く・・・。