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坂本龍一さんが、自身の映画と映画音楽について語る!

news 2017.11.11
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坂本龍一さんが第30回東京国際映画祭の「SAMURAI (サムライ) 賞」を受賞。記念に「坂本龍一スペシャルトークイベント〜映像と音の関係〜」が開催されました。同映画祭では坂本さんを追ったドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto:CODA』(11月4日(土)より公開中が上映され、舞台挨拶に登壇しました。

大きな拍手で迎えられた坂本龍一さん。まずは、初めて映画音楽を手がけた『戦場のメリークリスマス』(1983年)を振り返って、そのきっかけから語り始めます。
「通常は監督からオファーがあるのですが、じつは僕からオファーしたんです。大島渚監督から出演依頼を受けまして。その時何を血迷ったのか?音楽もやらせてくれるならって、つい言ってしまったんです。でも映画音楽に関してはずぶの素人です。大島さんはYMOの曲を聴いておられたのかもしれませんが、好きにやってくれと言われて…。ずいぶん勇気のある方だなと思いました。」
 子供の頃から映画に親しんできた坂本さんは『道』『太陽がいっぱい』などニーノ・ロータの音楽が好きだったと言いますが、自身で手がけるのは初めて。クリスマス=鐘の音、でも欧米の教会的ではなく、南洋のアジア的な響きのある鐘の音を想像しながら、理詰めでメロディを作っていったそうです。
「鐘の音はワイングラスの音を基本に使いました。2週間くらい試行錯誤しながら作っていて、ある時ふと意識がなくなって、目覚めたら楽譜が書かれていたんです。自動筆記みたいで、最初は自分で作った気がしませんでした(笑)。」



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そしてアカデミー賞作曲賞他数々の賞に輝き、坂本さんの名を世界に知らしめた『ラストエンペラー』(1987年)。ベルナルド・ベルトルッチ監督は、大変な人だったと明かしてくれました。
「45曲作って、使われたのは半分ほどでした。冒頭のシーンも録音したのに、バッサリ切られて。観た時はショックでしたよ。もう泣きべそ状態で(笑)。ベルトルッチ監督からは、『リトル・ブッダ』(1993年)のクライマックスシーンでも、使う曲を5回書き直しさせられました。僕の最多記録です。般若経がオペラ調に歌われているんですが、世界一泣ける曲を書けって言われて。まず2回ダメ出しされました。悲しみが足りないって言うんですよ。それで3回目に持っていったら、今度は悲しすぎる、希望がないと! さすがに僕も怒ってしまいました(笑)。もう床を転げ回って書いて、5回目でやっと採用されたんです。3回目に書いた曲は、別のシーンで使ってもらえましたけど。」
ベルトルッチに限らず、監督は本当に残酷ですよ。平気で音楽を切ったり、ずらしたりするんです。でも、そうやってこそ作品に深みが出ることが、よくあります。『ラストエンペラー』の冒頭シーンも、今では作品のために音楽を切ってよかったと思いますし、『リトル・ブッダ』では、詰め込みすぎたと感じますね。」



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音楽を作る立場としてメロディを途切れ途切れにしたり、ずらしたり、音を抜くことも効果的なのだそう。アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督と組んだ『レヴェナント:蘇えりし者』(2015年)を例に挙げて、説明します。
「もともと作った音楽自体が非常に途切れ途切れで、その間の空間を大事にしました。イニャリトゥ監督は素晴らしい音楽センスを持っている方で、彼と僕の意向は合致していたんです。音と音の間に自然音の隙間を作って音楽として独立しないで、あたかも自然に溶け込むように最低限の音で作ろうと思いました。僕はこの映画の主役は自然で、自然の音を際立たせるために音楽があると思っています。」
今、坂本さんの自然の音に耳を傾けるという音楽に対する姿勢は、『Ryuichi Sakamoto:CODA』の中に顕著に表れています。映画音楽のあり方から、自身の音楽との関わりについて語ってくれました。
「映画の中の音楽は、仮に役不足でも十分機能を果たす場合もあるんですね。そこがわかると、映画をさらに面白く観ることができると思います。映画の刺激や影響を受けて、自分の作る音楽も変わっていったのかもしれません。今年8年ぶりに『async』というソロアルバムを作ったんですが、映像的な感覚を自分の作品に持ち込んでいます。音楽としての文法を壊していきたいと、最近強く感じているんです。」



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その後の「SAMURAI賞」受賞式に登壇した坂本さんは、授与された刀型のトロフィーを手に、笑顔で挨拶。
「ありがとうございます。トロフィーには刀の絵も描いてありますね。僕が映画に最初に関わった『戦場のメリークリスマス』では、刀で居合をするシーンがありまして、撮影前に道場に通って居合を習ったことを思い出しました。現場でも、みんなでレプリカの刀を振り回して曲げちゃったりして(笑)。刀を持つとなぜか振り回したくなって、危ないですね。35年前のその頃は環境問題意識がなかったので、何も考えずに南太平洋のラロトンガ島の木をバッサバサと刀で切っていました。そんな数々の思い出が頭をよぎるうちに、思わずトロフィーを振り回したくなっちゃいました。私がサムライという名にふさわしいかどうかは疑問がありますが、賞をいただきまして、ありがとうございます。」
少年のようにおちゃめでユーモアにあふれている、坂本さんの意外な一面を発見できました。

続いて、『Ryuichi Sakamoto:CODA』上映前の舞台挨拶に移り、スティーブン・ノムラ・シブル監督も登場します。
「僕は自分の素顔をさらけ出すという趣味はないんです(笑)。この映画を作る承諾をした理由は、ひとえにシブルさんの人柄に尽きますね。人間性に惹かれて、この人だったら任せてもいいかな、という気持ちになりました。当初は監督の計画があったと思いますが、撮っているうちにいろいろなことが起こりすぎて、予定されていた日数はオーバーして、そのうち僕が病気になっちゃって…。しめたと思ったでしょ。これはドラマチックに撮れるって(笑)。」
シブル監督はすかさず「そんなことないですよ。気がついたら5年経っていました。」と返します。こんな冗談が言えるのも、2人が信頼関係で結ばれているからでしょう。
「実際にまとめるのは、大変だったと思います。」とシブル監督の労をねぎらう坂本さん。「ご自身にとって映画音楽とは?」という質問に対しても、真摯に答えてくれました。
「僕は映画にはルールはないと思っています。ですから、必ずしも映画に音楽は必要ではないんです。自分の職業を否定するみたいですけど…。なくてもいいし、あってもいいんです。映画は監督のもので、監督が決めることなので。必要とされる場所にいい音と音楽があれば、映画の中の音楽としては最高に幸せなケースだと思います。」


text:Keiko Maruyama

Ryuichi Sakamoto:CODA
11月4日(土)より角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国公開中
配給 : KADOKAWA 
©2017 SKMTDOC, LLC



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