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OK! INTERVIEW☆ゲイリー・オールドマン: 映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』(前編)
2018年度のアカデミー賞主演男優賞受賞に輝いたゲイリー・オールドマンがチャーチルへの驚くべき変身について語る。

limited 2018.03.23

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2018年度のアカデミー賞主演男優賞受賞に輝いたゲイリー・オールドマンが映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』のチャーチルへの驚くべき変身について語る。


ゲイリー・オールドマン(Gary Oldman)は、2018年 第90回アカデミー賞(Academy Awards)主演男優賞受賞に輝く。
彼は、既に映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』(原題:Darkest Hour)(日本2018年3月30日公開)でウィンストン・チャーチル(Winston Churchill)を演じて、ゴールデン・グローブ賞(Golden Globe)映画部門主演男優賞を受賞している。

ジョー・ライト(Joe Wright)が監督を務めたこの映画は、第二次世界大戦下、ウィンストン・チャーチルが英国の首相に就任して数日後に、ナチスドイツとの平和条約締結の可能性を探るべきか、もしくは祖国の自由を求めて力強く立ち上がって戦うべきかという究極の選択を迫られるところから始まる。

ナチスドイツの強力な軍隊が西欧を席巻して、侵略の脅威が差し迫る中、英国民は戦争の備えが出来ておらず、英国王はチャーチルに対して懐疑的で、出身政党は彼を首相の座から引き下ろすべく策略を練るといったチャーチルにとって暗黒の時代に、彼はそうした困難に立ち向かい、英国全土を遊説して、世界の歴史の進路を変える挑戦に挑んだのである。

この作品には他に、クリスティン・スコット・トーマス(Kristen Scott Thomas)、リリー・ジェームズ(Lily James)、ベン・メンデルソーン(Ben Mendelsohn)、スティーヴン・ディレイン(Stephen Dillane)も出演している。

ゲイリーは、最近この作品の出演者へのインタビューイベントに出席して、チャーチルへの驚くべき変身について語った。 彼は、また演技のひらめきについても語り、将来演じてみたい実在の人物がいるかという質問にも答えた。


━━ゲイリー、最初にこの役をオファーされた時に、チャーチルを演じる事へのためらいはございましたか? 引き受けようと思った決め手は何だったのですか?

それは何よりも、もし断ってしまった場合の怖れだったと思います。これまで何人もの俳優が彼を大変立派に演じていますが、新しいチャーチル像を作れないものだろうかと考えました。アンソニー(・マクカーテン:Anthony McCarten)が書いた脚本は素晴らしかったし、ジョー(・ライト)が監督した作品には敬意を表しています。
そうした事から安心してこの作品に取り組む事が出来ると思ったのです。そして、その後、 もし私が「多分」と言ったとしたらどうだったろう、と考えました。しかし、それから直ぐにテープレコーダーのある場所に行って、「試しに彼を演じてみよう」と思いました。ためらいはありましたが、彼を演じるアイディアに満ちあふれていました。
しかし、初期のチャーチルのニュース映像を見た際に気付いたのは、彼は、不遇だった時代、もしくは病弱だった際の、頭文字が刺繍されたスリッパを履いて、足を引きずって歩き回る気難しくて、意地の悪い老人のイメージが定着している事です。
ですが、私がそのニュース映像で目にしたのは、生き生きとしていて、ダイナミックかつエネルギッシュで、人々の先頭に立って行進し、跳ね回る、眼に輝きのある人物でした。
彼は、まるで赤ん坊のようでした。実際赤ん坊に見えました。にっこり笑った笑顔にあどけなさがあって、眼がきらきらと輝いていて、彼の未来に何かが待ち受けているようでした。それは、私の頭の中には無いチャーチルでした。アルバート・フィニー(Albert Finney)やロバート・ハーディ(Robert Hardy)が演じたチャーチルの影響かもしれません。ですから、この発見には興奮しました。そこでジョーと電話で話してから彼に会い、映画に反映させる事にしました。
そして、もし私がワイヤーの上を歩いていて足を踏み外した時には、とても頑丈な安全網が張ってあって欲しい、と思いました。


━━チャーチルの声は大変特徴的ですが、声を似せる為にどのような事をされましたか?

チャーチルは、抑揚が非常に際立っていて、公の場所で話す時はより特徴的でした。センテンスの終わりには、強調する為に抑揚を上げています。抑揚を下げる事もあります。それは、あたかも自分の声を調整して下げているかのようでした。
彼の音域は、私よりも少し低く、私は、歌の先生でオペラ歌手でもあるマイケル・エディーン(Michael Edeen)とチャーチルの声を作り上げていきました。彼がやって来て、私達は数回セッションを行いました。まずピアノでチャーチルの音域を確認しました。そして彼と運動をして、一緒に録音も行いました。私達は、どの音を、どの低い音をどこで出す事が出来るか試みました。
付け加えるべき事は、チャーチルは、午前3時若しくは午前4時迄働いていたという事です。1924年に彼は妻への手紙にこう記しています。「私は、食事の時は、いつもシャンパンを飲むが好きです。食間には沢山のクラレット(フランス産赤ワイン)とソーダを飲むのが好きです。」
あなたがこれらの録音を聴いたら、彼は恐らくブランデーを何杯か飲んで夜更かししたに違いない、と思うでしょう。ですからその重厚感、そのウィスキーと葉巻によって作られた声を身に付けるのが一苦労でした。そのようにして、私は彼を作り上げていきました。
他にもいくつか注意すべき点があります。私が演じようとしているのは、英国史上最も偉大なイギリス人であることは議論の余地がありません。そしてそのシルエットや彼が空間に作り出す姿が象徴的な人物を演じる訳です。そしてその声。私達は、それこそが(チャーチルの印象を形作っている)私達が覚えているものだと思っていますが、彼の声を注意深く聴いてみると実際にはそのような声をしていません。私はこの様にしてこの役に取り組み始めました。また、私はイギリス人ですが、その事に誇りを持っています。私は、これまで長年に渡ってアメリカ人を演じる事を求められてきました。従いまして、最初からそれは私がやるべき事で、出来るだけ明確なものにしようと心掛けました。

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現地時間2月18日、イギリス・ロンドンで開催された英国アカデミー賞(British Academy Film Awards : BAFTA)の主演男優賞も受賞したゲイリー・オールドマン、ご家族と一緒にレッドカーペットに登場(写真左から3番目)。

━━それがリー・ハーヴェイ・オズワルド(Lee Harvey Oswald)であろうと、シド・ヴィシャス(Sid Vicious)であろうと実在の人物を演じる方がより挑戦的だと思いますか? その音が頭の中に入った時により大きな責任感を感じますか?

はい。その音で始まります。また、その人の家族に対して、人々に対して、その肖像に対して、そのイメージに対して責任を感じます。シドの場合には、彼の母親とまず電話で話をして、その後彼女を訪ねました。私達は、何人かのチャーチルの家族にお会いしました。場合にもよります。実在しない人物の場合には、真っ白なキャンバスから始まります。チャーチルの場合は、既に沢山の写真が頭の中に入っています。


━━メーキャップは、今回の作品のあなたの演技に於いて、極めて重要なものでしたが、リハーサルはメーキャップをして行ったのですか? メーキャップによってあなたの演技に変化はありましたか?

そうですねえ。メーキャップは、部屋にいる象のようなものでした。私がどのように見ているかを見るからです。私達は、一緒に腰掛けて、聞きました。「ところで、これはどのようになるのですか?」それがいつもの事でした・・・不可欠な事でした。そこを立ち去る事は出来ませんでした。あの特徴的な顎を付けなければなりませんでした。体重も80ポンド(約36キロ)増やさなければなりませんでしたが、それは出来ませんでした。私は、もうすぐ60歳になる訳ですから。
デ・ニーロ(ロバート・デ・ニーロ(Robert De Niro))は、一度見事にそれをやってのけました。そこでメーキャップに頼る事にしました。私は、今回のメーキャップを担当した一弘(辻)を知っていました。私達(辻一弘氏とジョー・ライト監督)は、我が家のキッチンのテーブルに座り、私は言いました。「私の個人的な考えですが、世界にたった一人だけそれをやってのける事が出来る人がいます。」 私が覚えているのは、ジョーが小さなノートと鉛筆を取り出して、一弘に「あなたの名前のスペルを教えて下さい。」と聞いた事です。しかし彼は、映画業界から引退していました。そこで彼に復帰してもらう為に説得する必要がありました。彼は現在彫刻家で、映画からは遠ざかっていました。彼は俳優が好きではありませんでした(笑)。
何故なら彼らはじっと座っていてくれないからです。しかし彼はリック・ベイカー(Rick Baker)門下の素晴らしいメーキャップ・アーティストでした。彼は、リック・ベイカーの下でこの仕事を始めました。リックは彼に「もう教える事は何も無い」と言いました。弟子が師匠を超えた訳です。
こうして彼は、映画業界を去りました。ですから、私達は彼に映画業界に戻ってきてもらう必要がありました。そして復帰してくれました。その後試行錯誤が待ち受けていました。
私が「完全なウィンストン」と呼んでいたメーキャップがありましたが、奇妙に見えて上手くいきませんでした。私は、どうすればよいか分からなくなりました。そこでその後何度もテストを重ねて、付け足したり、取り除いたりしました。そして、遂にウィンストンの雰囲気が十分に感じられるものに辿り着きました。しかし、まだゲイリーが見えました。
そこで彼はやり直して、それに修正を加えました。こうして完成した訳です。私は、メーキャップは、実際には演技をする際の基準点だと思います。
そしてカズ(一弘)は、彼独自の方式を持っていて、それは言わばカーネル・サンダース(Colonel Sanders)の秘密のレシピのようなもので、彼はその彼独自の方式に何かをしているのです。それは、彼のものです。彼のメーキャップは、厄介なものでも重たいものでもなく、押し付けがましいものでもありません。それはまるで「付けているのを忘れていました」と思わせるものです。あたかもクロス・ユア・ハート・ブラジャー(快適で着心地の良いノンワイヤーブラジャー)のようです(笑)。


━━女の人達はまだそのブラジャーを身に付けていますか?

分かりません!
私は、テレビのコマーシャルで見たのを覚えています(笑)。「付けていたのを忘れていたわ」ですから付けている感覚が無いのです。
そして何か変な感じでした。何故ならあなたは誰かと話していて、彼らはあなたを見ている。そして、あなたはウィンストン・チャーチルなのです。そしてあなたは、自分がどのように見えているかを忘れている訳です。でも言っておかなければならないのは、それは必要だと感じていました。いや・・・でもそれを押し付ける必要はありませんでした。それは、これまでにカメラの前に立った中で最もリラックス出来て、最も自由な感覚でした。恐らくそれは変装によるものでしょう。部分的にはそのせいだと思います。しかし私達は、リハーサルに4週間を費やしました。


━━それは長いですね。

はい。ジョーは、リハーサルが大好きなのです。そして、俳優はリハーサルが好きです。ですから、メーキャップをしてリハーサルをする時間もありました。実際のシーンを歩いたり、そこに息を吹き込み、しっくり来ない場合には台詞を変えたりする機会を得る事が出来ました。多くの映画がそうであるように実際のセットで生で台詞を言うよりも、映画を作っている人達に囲まれて大声で台詞を言うのは喜びでした。まるでロックンロールのようでした。最初の小節から力強く演奏しなければなりません。最初のテイクで運が良ければ魔法を手に入れられるかもしれません。でも私はジョーと一緒に仕事をするのが好きでした。何故なら私達は、一回目、二回目と試して、料理を始めていきました。ベン・メンデルソーンは、「グリルで別のパンケーキを焼こう」と言っていました。リハーサル初日に私達は、ベン・メンデルソーンとリハーサルを行いました。ジョーは、「オッケー。良かった」と言いました。するとベンが「最初のパンケーキだ。たかが最初のパンケーキじゃないか。もっとサクサクしたものに出来る」と言ったのです。それがリハーサルをする醍醐味でした。


Interview © Lucy Allen/Hotfeatures
Photographs © Toby Hancock/Express Syndication


後編へ続く・・・。
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